記念館だより

映画の街・鎌倉へようこそ!~特別展「鎌倉映画地図」が始まりました~

2017.03.17

だいぶ暖かくなってきて、鎌倉に来るお客様もちらほら春の装いが目立ち始めました。
本日17日より川喜多映画記念館では、特別展「鎌倉映画地図」が始まっています。

入り口

戦前より文士たちが集い、松竹の撮影所が蒲田から大船へと移ってからは映画人も多く居を構えた鎌倉。また、独自の自然と歴史的な風景に彩られたこの街は、映画の舞台としても長く愛されてきました。

今回の特別展では、そんな鎌倉と映画のゆかりをトピックごとに辿る前半、映画とゆかりの深い場所を地図形式で、宮崎祐治さんによるイラストレーションと共にご紹介する中盤、そして後半は、鎌倉の街を美しく捉えた近年の名作『海街diary』から、四姉妹の衣裳や映画の世界観を表した写真作品など、貴重な資料を数多く展示しています。

展示前半

展示中盤_地図

宮崎さん原画

展示後半_海街

こじんまりとした空間ながら、中身の濃い展示になっていると思いますので、是非当館で展示をご覧いただいてから、鎌倉散策へと出かけてみてはいかがでしょうか。

明日18日からは、4月の映画上映/トークイベントのチケットも発売になります。
既に発売中の小津安二郎監督『晩春』『麥秋』も含め、『辻が花』『狂った果実』『黄色いからす』『喜びも悲しみも幾歳月』と、往年の名作が並ぶラインナップとなっていますので、映画の上映も合わせてお楽しみください。(胡桃)

企画展「ヨーロッパ映画紀行」本日をもって終了しました! (小笠原正勝さんによるギャラリートークの報告も兼ねて)

2017.03.12

少しずつ暖かくなり、春の息吹が感じられるこの頃ですね。
記念館の庭園では梅が咲き、玉縄桜が咲き、今はハナモモが見頃を迎えています。

本日3月12日をもって、約2ヶ月弱の間開催してきました企画展「ヨーロッパ映画紀行」が終了しました。
川喜多夫妻が設立した「東和」の映画作品や、東和の宣伝部で活躍した野口久光氏によるデザイン、アラン・ドロンやカトリーヌ・ドヌーヴなど人気を博した名優たちの作品、1950年代に始まり、ATGやエキプ・ド・シネマ、ミニシアター文化といった形で見られてきたアート映画の歴史など、ポスターを通してこれまでに私たち日本人がどんなヨーロッパ映画を見てきたかを辿る内容でしたが、皆さまにとって懐かしい作品との再会をお楽しみにいただけたのでしたら、嬉しく思います。

会期中はいくつかのイベントを実施し、こちらの記念館だよりでもご報告してまいりましたが、会期後半には新しい取り組みにも挑戦しましたので、ご報告いたします。

当館で展示する資料は、映画ポスターが中心です。ポスターを見ながら、どんな映画だったかを思い出したり、当時のことを語り合いながら、映画の魅力を感じるひとときを過ごしていただく、というのは勿論素晴らしい楽しみ方なのですが、あくまで映画の「内容」に関わる限りにおいては、実際に作品を見ることがベストであるわけで、ポスターはあくまで補助的な資料に過ぎません。そうなるとどうしても、上映できる映画には限界があるからポスターの展示でそれを補う位置づけになってしまい、ポスターそれ自体の魅力が伝えられていないのではないか、というジレンマをこれまで持ち続けてきました。
しかし私たち学芸員は、映画作品や映画の歴史について解説することはできても、映画というジャンルを超えてポスターというメディアについてお伝えしたり、グラフィックデザインや印刷技術の発展については、まだまだ勉強が足りないという実情もありました。

そこで、ポスターそのものの楽しみ方を皆さまにもっと知っていただくため、グラフィックデザイナーの小笠原正勝さんをゲストにお迎えして、2月25日(土)にギャラリートーク「ヨーロッパ映画ポスター紀行」を実施しました。

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小笠原さんは、1960年代後半から90年代にかけて映画・演劇のポスターを数多く手掛けており、今回の企画展でも『旅芸人の記録』『ベルリン・天使の詩』などいくつも展示している方です。

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野口久光さんの少し後の世代にあたる小笠原さんは、野口さんのポスターの魅力を語ると同時に、手で描くイラストから写真を使うようになるポスター制作の技術的な変化や、白黒の写真に人工着色する手法についても話してくださいました。
また、今回展示しているのはヨーロッパ映画のポスターだけだったので、当日は小笠原さんが手掛けた日本映画のポスターの縮小版やラフ画などもお持ちいただき、この機会でなくてはわからないお話をたくさんお聞きできました。
特に、日本映画と外国映画のポスター制作の手順や関わり方の違いや、どのようにイメージを作り上げていくかなど、デザイナーならではの具体的なお話をお聞きできたのはとても興味深かったです。

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小笠原さんの仕事は、ATGから岩波ホールのエキプ・ド・シネマ、川喜多和子さんが副社長を務めたフランス映画社の作品まで、日本で上映されたアート映画の歴史をそのままなぞるに等しく、芸術的な映画にして斬新なポスターありと言うべき見応えのあるポスターの数々は、今後さらに評価されていくことでしょう。

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デザイナーの方から直接ポスターについてのお話を聞くことで、映画作品とは別に、ポスター自体の魅力を味わっていただけたのではないかと思います。
参加された20名ほどの皆さんがとても熱心で、小笠原さんにもとても喜んでいただきました。

これからも、それぞれの企画展に合ったイベントを実現させていきたいと思いますので、是非お楽しみにしていてください。

次回は、鎌倉と映画の関係を、わかりやすい地図や楽しいイラストレーションでご紹介する特別展「鎌倉映画地図」が3月17日(金)から始まります。
春の鎌倉は散策にも最適です。是非当館で展覧会を見て、映画の足跡を探しに鎌倉の街に出かけてみてください。お待ちしています!(胡桃)

鎌倉で珠玉の映画音楽を味わう

2017.02.15

2月11日(土・祝)『ニュー・シネマ・パラダイス』の上映に合わせて、鎌倉在住のシンガーソングライターである秋元勇気(Citta)さんをお迎えし、「声とギターで聴く映画音楽」と題したコンサートイベントを開催しました。

cittaさん俯瞰

先週は、鎌倉でも雪やあられが降ったりと変な天気が続いており、2月にイベントを実施することの不安を感じてしまいましたが、当日は交通機関も特に問題なく、Cittaさんはさすがご近所というだけあって、機材を載せた台車を押しながら颯爽と登場されました。

当館の「映像資料室」は、映画の上映に最適な音環境になっているため、楽器の演奏には実はまったく向いていない、ということを、今回のイベントを計画中に知りました。
(音楽業界では、音がまったく響かずに吸収されてしまう空間を「デッド(dead)」と呼ぶそうで、まさに当館の劇場はそのような環境らしいです涙)
この記念館で音楽のイベントは金輪際できないのかも…と一時は諦めかけていたのですが、Cittaさんにご相談したところ、「PAを入れれば問題ないですよ。自分の機材を持っていきますよ!」と救いの手を差し伸べていただいたのでした。
ですので、出演はもちろんのこと、機材の手配に至るまで、Cittaさんがいなければ今回の企画は実現できませんでした。この場を借りて、改めてCittaさんにお礼申し上げます!

cittaさんミドル

コンサートでは、長年鎌倉に住み、先日亡くなった俳優ピエール・バルー氏の歌が懐かしい『男と女』から、ブラジルのボサノヴァを使った『黒いオルフェ』の「カーニバルの朝」、『禁じられた遊び』の名曲「愛のロマンス」、映画の余韻にひたりながら聴く『ニュー・シネマ・パラダイス』、『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが歌った「ムーン・リバー」、そしてあまり知られていませんが実はチャップリン自身が作曲している『モダン・タイムズ』の「スマイル」と、映画音楽の中でも珠玉のラインナップで、会場全体がCittaさんの声とギターの音色に包まれ、贅沢なひとときとなりました。

映画の音楽を生の演奏で聴く機会はなかなかないと思うので、短い時間ながらも、皆様貴重な時間をお楽しみいただけたのではないでしょうか。
また、映画は映像だけではないのだということを、改めて確認する機会ともなり、今後も様々な角度から映画の素晴らしさを味わっていただける企画をご用意していきたいと思います。

cittaさん寄り

Cittaさんは、毎月第2土曜日に鎌倉FMの音楽番組「LIFE BEAT LAB」に出演、3月から1ヶ月間はJ:comの番組「空から紀行」に楽曲を提供されている他、ライヴ活動も精力的にこなしています。
地元鎌倉のアーティスト、秋元勇気(Citta)さんを、当館ではこれからも応援させていただきます!(胡桃)

フィリップ愛に染まった時間

2017.01.29

企画展「ヨーロッパ映画紀行」関連上映にて、1月27日より3日間、ジェラール・フィリップが早世の画家モディリアーニを演じた『モンパルナスの灯』を上映しました。
1958年に公開された今作からわずか1年後、自らが演じたモディリアーニの生涯を辿るかのように、ジェラール・フィリップ自身、36歳の若さでこの世を去っています。

そんな不思議な運命をもつ作品の上映に合わせて、28日(土)には、日本でジェラール・フィリップ映画祭を企画し、日本で再びジェラール・フィリップ(G・P)を甦らせた、山中陽子さんをお迎えしてトークイベントを実施しました。

山中さんひき

山中さんは20代はじめに、G・Pの魅力に取り憑かれ、G・Pの作品を上映しようと26歳の若さで映画配給会社セテラ・インターナショナルを設立、1996年より4回にわたって映画祭を開催しただけでなく、本の出版や、ファン同士を繋ぐファンクラブの立ち上げなど、様々な形でG・Pを現代に甦らせた方です。
日本でG・Pを語る際には欠かせない存在ですが、一つの会社の社長さんであり、私はこれまでお会いしたことがありませんでした。若くして会社をつくり、並々ならぬ情熱で突き進んで来られた方ということで、どんな女傑がいらっしゃるのか…とやや戦々恐々としていたところ、約束の時間に現れたのは、若くて気品のある美しい女性でした…!

山中さんより

きりっとした美しさをたたえつつも、人当たりの柔らかい印象でほっとしながら、慣れない私の進行ながら、トークは終始和やかなムードに包まれました。
画面でG・Pの美しい写真をご覧いただきつつ(写真を選んでいるときの楽しかったこと!)、彼の代表作を年代順に辿りながら、作品にまつわるお話をお聞きしました。

年上の人妻に恋をする17歳の高校生を演じ、出世作となった『肉体の悪魔』(1947年)では、ヒロインの女優、ミシュリーヌ・プレールが「この役はG・Pでなければできない」と言い切って出演が決まったこと、G・Pの魅力が開花した重要な作品であるにも関わらず、権利関係が複雑で、長い間上映されてこなかったこと、その理由のひとつに、監督のクロード・オータン=ララが戦後数々の代表作を残しながらも、ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちの登場によって、否定するべき旧世代の映画人として槍玉に挙げられ、自らの作品の上映を拒んできたこと。
ひとつの作品を巡る物語が、時にはとんでもなくドラマチックであることを実感したのでした。

今回のトークでは、G・Pというテーマと一緒に、「映画配給」の仕事についても伺いました。お客様の目にふれにくいながらも非常に重要なこの仕事は、川喜多夫妻が戦前から携わってきた仕事でもあり、機会があれば是非お客様にも知っていただきたいと考えていました。
G・Pの話に花が咲き、あまり踏み込むことはできませんでしたが、セテラさんがどのようなスタンスで作品を選び、どのような思いで私たちに映画を届けてくれているのかを、実際に配給した『クロワッサンで朝食を』を例に挙げながらお聞きすることができました。
「他の会社と競合するような作品はあえて選ばず、セテラじゃなきゃできない映画、そして自分の愛するヨーロッパの名作を届けたい。その作品を見ることで、人生が少し豊かになるような、そんな作品を選びたい。そして原題を単にカタカナにするのではなく、タイトルの意味が皆にちゃんと伝わるような邦題をつける。」
という山中さんの言葉からは、ビジネスの世界ではありながらも、良い映画を見つけて日本の観客に届ける、という配給の仕事に対する誇りと使命感が感じられました。

予定の時間を大幅に超えてしまった今回のトークイベントでしたが、G・Pという俳優の魅力や、映画配給の仕事について、皆さんが少しでも新しい何かを発見していただけましたら幸いです。

「ヨーロッパ映画紀行」はまだまだ続きますので、是非お待ちしております!(胡桃)

モンパルナスの灯