記念館だより

次こそはきっと晴れて…!雨の旧和辻邸一般公開

2017.10.18

10月14日(土)、15日(日)は、記念館裏の庭園に建つ旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)の、年に2回の一般公開日でした。
ところがその前日から、天気予報は雨、雨、雨のマークばかり。天気予報が外れることを願うことさえ許されない状況の中、少し重たい気分で週末を迎えました。

14日(土)は、雨が降ったり止んだりする中、なんとか大降りにならずにもちこたえ、お客様もほとんど途切れずに足を運んでいただきましたが、15日(日)は朝からずっとしとしと雨。和辻邸へと上る階段も次第にぬかるみ始め、地面はなかなかの悲惨な状態に。
それでも皆さん果敢に足を踏み入れてくださり、私たちスタッフはドキドキしながらも、じっくりとご覧いただいたお客様に感謝の気持ちでいっぱいでした。

本日18日(水)は実に久々の快晴となりましたね。せっかくなので、写真は今日の青空の下の和辻邸の写真です。
写真右手のピンクの花をつけた木は、こちらで調べた限りでは「クサギ」というらしいのですが、もし違っていたら是非ご指摘くださいませ。

次回、春の一般公開は4月6日(土)、7日(日)の予定ですが、これから迎える紅葉の季節に合わせて、12月1日(金)~3日(日)にも特別公開させていただきます。
今回、雨のために来鎌を断念された方もいらっしゃると思いますので、今度こそは、良いお天気の下でお待ちしております!(胡桃)

西川美和監督、来たる!

2017.10.08

特別展「映画衣裳デザイナー 黒澤和子の仕事」関連イベントとして、10月6日(金)に『ディア・ドクター』で和子さんと組まれた西川美和監督のトークイベントを開催しました。

西川監督といえば、是枝監督に見出されて助監督を経験後、20代にして『蛇イチゴ』で監督デビュー、『ゆれる』『夢売るふたり』『永い言い訳』と、作品を発表するごとに高い評価を得、起用した俳優たちからはこれ以上ないほどの信頼を集め、さらには小説やエッセイでも常に注目を浴びている、実に才能豊かな方です。

今回のイベントは、展示の担当学芸員である私が聞き役に入るということもあって、私は数日前から極度の緊張状態に陥っていました。
しかし当日記念館に現れた西川美和さんは、物腰柔らかな、それでいて一本ピンと芯の通ったとても素敵な方で、そんな監督を前にして、私は緊張しながらも徐々に身体の強張りがほどけていくのを感じたのでした。
トーク中は、私がひとつ投げかけると、監督がそれをがしっかり受け止めて、膨らませてお客さんに伝えてくださるので、私は思ったよりもずっと楽に壇上に座っていることができましたし、緊張と弛緩を織り交ぜながらの監督の魅力的なトークを、お客様にも喜んでいただけたのではないかと思います。

8年も前の作品でのトークということで、監督は当時の資料を持参してくださり、和子さんと最初の打合せをするために用意したという、各キャラクターのメモをいくつか紹介してくださいました。
そこには、映画に描かれているより遥かに具体的なキャラクター設定がびっしり書き込まれていました。鶴瓶師匠演じる伊野の父との関係や、海外旅行に行くのが夢で、ハワイに行きたいという設定や、余貴美子さん演じる看護婦の大竹の学生時代のこと、瑛太さん演じる研修医相馬の服の趣味まで、一人一人の豊かな背景が監督から和子さんに伝えられていたことがわかります。私たち観客は、彼らのそういった部分を映画から直接知ることはありませんが、西川作品の特徴とも言える、厚みのある、それ故人間性の良し悪しに関わらず魅力的な登場人物たちは、このようにして描かれているのだということがよくわかりました。

客席には、劇中の衣裳をとても細かく見てくださっていた方もいて、監督のメモに「学生時代バンドをやっていた」と書かれていた通り、瑛太さんが白衣の下に着ていたTシャツは音楽系のものが多かったり、それが最後の場面では襟付きのシャツに変わっていて、そんな些細なところにもキャラクターの変化が見てとれるということがお客様の指摘で明らかになった一幕もありました。

西川監督の作品は、企画立案から取材、脚本執筆を経て撮影と、完成まで十分な時間をかけて作られます。ちょうど1年前に最新作の『永い言い訳』が公開されたので、次回作まではおそらくまだしばらく時間が必要かと思いますが、絶対に期待を裏切らない作品が届けられるのは間違いないでしょう。
それまで私たちは、寂しくなったら過去の作品や小説、エッセイなどを手に取りつつ、楽しみに待っていたいと思います。

西川監督、素敵なお話をありがとうございました!

追伸:直木賞候補にもなった西川美和さんの短編集『きのうの神様』は、『ディア・ドクター』とも緩やかな繋がりを持つ、僻地医療をテーマにした作品です。完全なる原作でもなく、かといって関係がないわけではない、映画と小説のそのような関わり方は新しく、とても良いアイディアだと思います。映画をご覧になった皆さま、是非こちらの小説も手に取ってみてくださいね。(胡桃)

「中華電影とその時代-知られざる映画史入門」開催のご報告

2017.10.05

9月26日から10月1日にかけて、シネマセレクション「中華電影とその時代-知られざる映画史入門」を開催しました。本特集では、1939年に中国・上海に設立され、川喜多長政が日本側の代表を務めた中華電影股份有限公司(略称「中華電影」)に関連する4作品の上映とトークイベントを実施しました。

 

「中華電影」は上海を中心に、1939年から1945年の約6年間で、劇場への配給、ニュース映画や文化映画の製作、巡回映写や劇場の運営、そして、中国劇映画の製作を手がけました。今回の特集では、「中華電影」が日本占領下の上海で最初に配給した作品である『木蘭従軍』(製作:1939年/監督:卜萬蒼)や、日本語吹替版として日本で公開したアジア初の長編アニメーション『西遊記 鉄扇公主の巻』(製作:1941年/監督:萬籟鳴、萬古蟾)、中国のスターと李香蘭が共演した清代歴史劇の大作で、中華聯合、満映との合作となった『萬世流芳』(製作:1943年/監督:朱石麟ほか)、阪東妻三郎が主演した大映との合作『狼火は上海に揚る』(製作:1944年/監督:稲垣浩、岳楓)という貴重な4作品を上映しました。

 

9月30日は『萬世流芳』の上映と、長年に渡って中国映画史の研究をされてきた東京大学教授である刈間文俊先生にご登壇いただき、「映画『萬世流芳』と李香蘭」と題したトークイベントを開催しました。詳細な作品分析から、本作に込められた抗日のメッセージ、李香蘭の登場シーンをもとに分析したアメリカ映画からの多大な影響などをお話しいただきました。

10月1日は『木蘭従軍』の上映と上海戯劇学院映画芸術研究センター教授である石川(セキ・セン)先生による「中華電影とその時代」と題したトークイベントを開催しました。現在の石川先生の事務所は、かつて中華電影の事務所があった場所でもあり、今回のテーマとも繋がる大変興味深い話から始まりました。当時の上海映画界の状況を、時代背景から経済的側面、また、当時の映画人の背景に至るまで、詳細な調査資料をもとに実証的にお話しいただきました。

6日間にわたる映画上映とトークイベントは、当館にとっても川喜多夫妻の足跡を知る大変貴重な機会となりました。今回の開催にあたっては、刈間先生、石川先生、並びに刈間先生の院生の皆様、東京大学・表象文化論、そして、東京国立近代美術館フィルムセンターの多大なる御協力をいただきました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。今後も当館では、映画史における知られざる側面に光にあてると共に、川喜多夫妻の足跡を辿る特集を検討しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。現在開催中の特別展「映画衣裳デザイナー 黒澤和子の仕事」では、「中華電影関連コーナー」を設置しております。ぜひ特別展とあわせてご覧ください。(文)

特別展「映画衣裳デザイナー 黒澤和子の仕事」開幕しました!

2017.09.15

本日9月15日(金)より、鎌倉市川喜多映画記念館では、現在大活躍中の映画衣裳デザイナー・黒澤和子さんの仕事をご紹介する特別展が始まりました。

黒澤明監督を父に持つ和子さんが、黒澤監督の『夢』から映画の世界に入り、時代劇から現代劇まで多くの作品を手掛け、現在の日本映画を支えるようになっていく足跡を、デザイン画を中心とした資料でご覧いただけます。


今回は東京衣裳さんのご協力で、映画で実際に使用した衣裳も展示しています。『真田十勇士』で松坂桃李さん演じる霧隠才蔵が着用した独創的な衣裳から、『清須会議』で大泉洋さん演じる羽柴秀吉が着ていた豪華絢爛な衣裳まで、是非間近でお楽しみください。

当館ではこれまで古典的な作品を中心に取り上げてきましたが、現役で活躍中の映画人をご紹介できる機会を本当に嬉しく感じると同時に、映画界の現在・未来を見据えての展示は今後益々重要になってくるのではないでしょうか。
というわけで、今回は映画上映も比較的新しい作品が中心となり、当館としては色々な意味でチャレンジングな企画となっています。

ちなみにですが、現在公開中の話題作『三度目の殺人』(是枝裕和監督)と、来月いよいよ公開の『アウトレイジ 最終章』(北野武監督)、どちらも衣裳デザインは黒澤和子さんが手掛けているんですよ。凄いですね!

幅広い世代の方にご覧いただきたいと思っていますので、これからの過ごしやすい時期、是非遊びに来てください。スタッフ一同お待ちしています。(胡桃)