記念館だより

松本清張をめぐる3つのイベント~異なる世代が語る清張の魅力~

2018.12.13

11月頭には横溝正史関連のイベントで当館おおいに盛り上がりましたが、11月末からは『砂の器』の上映に合わせて、松本清張関連のイベントを立て続けに開催したので、まとめてご報告いたします。

11月29日には上映後、『砂の器』の重要な回想シーンに登場する子役・春田和秀さんによる映画談話室「伝説の子役が見た『砂の器』の現場」を実施しました。


春田さんは、当時テレビや映画を舞台に大活躍していた子役だったのですが、16歳で俳優業を終えて以来、当時のことについてはまったく語ることなく、封印してこられました。そんな春田さんを、映画評論家であり映画監督の樋口尚文さんが「昭和の子役」という書籍を執筆される際に掘り起こし、ロングインタビューを敢行したのをきっかけに、『砂の器』について語る機会が生まれ、今回は樋口さんからのご提案もあり、急遽企画が立ち上がったという次第です。


「昭和の子役」発売以来、メディアの取材などは何度か受けてきたという春田さんですが、今回のようにお客様の前でお話しするのは初めてとのことで、はじめは緊張された面持ちでしたが、聞き手を務めた樋口さんの軽妙で的確な進行と、客席の温かな雰囲気のもと、野村芳太郎監督の演出や長期にわたる撮影、その当時の心境について、丁寧に言葉を探しながらお話ししてくださいました。


映画をご覧になるとわかりますが、和賀英良が演奏する「宿命」をBGMに展開する一切台詞のない回想シーンでは、和賀の幼少期を演じた春田さんの目つきが雄弁に彼の感情を語り、その後の和賀の人生に説得力をもたせており、やはり春田さんの存在は作品の核といっても過言ではありません。
春田さんが語ってくれたこと、そしてこれから末永く語っていってくださるであろうお話は、日本映画史に残る名作である『砂の器』の、非常に貴重な証言です。作品が今でも愛されているのを知るうちに、自分の経験を伝えていくべきなのではないかと使命感を感じられたという春田さん、映画を愛する多くの人にこれからもその声を届けていっていただきたいと思います。


12月1日には、『犬神家の一族』に引き続き、鎌倉学園映画研究同好会の学生さん3名に登壇していただき、『砂の器』についてお客様と語り合う映画談話室「中高生から見た日本のミステリー映画の魅力」を実施しました。

事前に何度も映画を見て、気になったところについて詳しく調べてもらったことを発表し、お客様からも感想をいただくこの企画、『砂の器』では、物語の要ともいえる「ハンセン病」について、歴史的変遷を説明してくれたり、原作と映画がいかに違っているかを調べてくれました。


お客様からも様々な感想を聞くことができ、中には作品の中に登場する秋田県の亀田出身の方もいらっしゃって皆でびっくりしてしまいました。
学生さんたちは、初めてこの映画を見たときに感動のあまり涙が出たと話してくれて、やはり名作は世代を超えてその素晴らしさが伝わるものなのですね。
若い人に昔の映画を見てもらう機会は、今後も大切にしていきたいと思っていますので、鎌倉学園の皆さん、また是非お願いします!


そして12月9日には、先月文化功労者の受章でも話題になった、作家の阿刀田高さんにご登壇いただき、「松本清張の光と影」と題して、文学者としての清張に焦点を当てた講演をしていただきました。


阿刀田先生は清張作品をご自身で編纂したセレクションを出されるなど、長年にわたり同じ文学者の立場から清張の魅力を広めてきた方です。
講演会当日の朝に送ってくださったレジュメに沿って進められた講演では、清張と太宰が実は同い年という話から始まって、太宰の死をめぐる推理や、芥川賞受賞作「或る『小倉日記』伝」の素晴らしさ、清張の推理小説の魅力と弱点、「砂の器」の原作と映画を巡る批評、清張の人間的な面など、2時間にわたって濃密なお話を繰り広げてくださいました。多くの文章や経験に裏打ちされた説得力のある話に、作家ならではというべきか、豊かな想像力が加わり、しかも聞く人を惹き付けてやまない語りの面白さは、素晴らしい以外の言葉を見つけられません。


遠方から駆けつけてくださった方も多かったようなのですが、皆さま非常にご満足いただけたようで、企画の最後を飾るにふさわしい、素敵な催しになりました。阿刀田先生、お忙しい中本当にありがとうございました!(胡桃)

《旧川喜多邸別邸特別公開》 イラストレーター 伊東雅江 作品展 「かまくらにのこる すてきな たてものをめぐって ~川喜多映画記念館から中央図書館への散歩みち~」

2018.12.13

11月20日(火)~25日(日)旧川喜多邸別邸の特別公開が行われました。

同時期に鎌倉市在住のイラストレーター・伊東雅江さんの作品展「かまくらにのこるすてきなたてものをめぐって~川喜多映画記念館から中央図書館への散歩みち~」を開催しました。
伊東さんが描く鎌倉のさまざまな風景とエピソードが素敵な「カマクラ カレンダー」を毎年、楽しみにしていらっしゃる方も多く、当館のオリジナルポストカードや一筆箋も伊東さんに描いていただいています。

今回は、当館から中央図書館への散歩みちにある素敵な建物の原画を展示し、連日沢山のお客様にご来場いただきました。

伊東さんご本人もご多忙の中会場まで足を運んでいただき、お客様と和やかにお話しされていました。
伊東さんが描く優しいタッチのイラストと伊東さんのお人柄に私もすっかりファンになってしまいました♡

作品展終了後も当館では以下の商品を販売しております。

①「かまくらのすてきなたてもののえほん」
鎌倉市景観重要建造物等 絵でみる図鑑[鎌倉駅周辺エリア]
発行:(社)ひとまちかまくらネットワーク
絵・文 伊東雅江
デザイン カマクラデザイン
100円(冊子の売上げの一部は、(社)ひとまち鎌倉ネットワークを通じて「鎌倉市景観重要建築物等保全基金」に寄付されます。

②2019年度「カマクラ カレンダー」NEW!入荷しました。
1,080円

受付前に見本がございますので是非お手に取ってみてください。(つむぎ)

鎌倉ミステリーツアー終了しました!

2018.11.26

鎌倉を舞台にした2 本のミステリー映画『DESTINY鎌倉ものがたり』『女の中にいる他人』の上映に併せて、11月14日(水)(友の会会員向け)と16日(金)(一般のお客様向け)、2日にわたって映画にゆかりのある場所を散策するツアーを開催しました。
両日ともお天気に恵まれ、爽やかな秋風を感じながら気持ちよく散策が出来ました。


今回の散策ルートは記念館から出発⇒ミルクホール(鈴木清純監督作『ツィゴイネルワイゼン』ロケ地)

⇒小町通りにある明治6年創業の老舗 富士洋傘店(成瀬巳喜男監督作『女の中にいる他人』セット撮影。路地裏から見える店舗)

 

鎌倉駅ではテアトル鎌倉の写真他、鎌倉に劇場があった時代の写真をお見せしながらご案内しました。

そして江ノ電に乗り、和田塚駅で下車 (是枝裕和監督作『海街diary』、山崎貴監督作『DESTINY鎌倉ものがたり』)

駅から歩いて鎌倉海浜公園(庵野秀明監督作『シン・ゴジラ』)

江ノ電107車輌(昭和57年に鎌倉市に寄贈)見学

 

由比ガ浜海岸沿いを歩きながら長谷駅を通過し、ゴールは鎌倉大仏高徳院(CG合成『DESTINY 鎌倉ものがたり』、小津安二郎監督作『麦秋』他)。

鎌倉と映画をこよなく愛する当館スタッフMの熱い解説とともに約3kmのコースを歩いた今回のツアー、ご参加いただいたお客様に楽しんでいただけましたら幸いです。

今後もいろいろな企画に併せてツアーを開催したいと思いますので、またのご参加をお待ちしております☆(つむぎ)

 

横溝×金田一×市川崑をめぐる2つのイベント

2018.11.07

現在開催中の特別展「ミステリー映画大全集~横溝正史vs.松本清張~」。
10月30日~11月4日の1週間は、展示のメインのひとつでもある、横溝正史原作の金田一シリーズの映画化作品から、映画史に残る傑作でもある『犬神家の一族』(1976年)、『悪魔の手毬唄』(1977年)を上映しました。


その関連イベントとして、3日には両作品の映画作りを支えたスタッフの方達によるトークイベント「金田一シリーズはこう作られた!~市川崑映画の舞台裏~」を、4日には『犬神家の一族』上映後に鎌倉学園の映画研究同好会の生徒さんが映画について語る映画談話室「中高生から見た日本のミステリー映画の魅力」を開催しました。

市川監督による金田一シリーズを見ると、作品としてのインパクトはもちろんですが、細部にわたり非常にこだわって作られているのがわかります。今回の展示では、映画で実際に使われた小道具やセットデザイン画などをご紹介していることもあり、美術や小道具、編集など裏方の作業を通して、これらの作品が一体どんな風に作られているのかをお客さんにも知っていただきたいと思い、トークを企画しました。当初は2,3名の方にご登壇いただければ…と考えていたのですが、この話をするなら○○さんにもいてほしい、この話は○○さんに聞かなくちゃ、とあれよあれよと人数が増えて、当館のトークイベント史上最大の7名の方にご登壇いただくという、物凄く豪華な、そして貴重なイベントとなりました。

今回ご登壇いただいたのは…
編集として市川監督から絶大な信頼を寄せられ、金田一シリーズの独特でスピーディーなカッティングを生み出した長田千鶴子さん(右、金田一の顔が入ったセーターは、石坂浩二さんが作ってくださったそうです)、


『犬神家~』の小道具を担当し、金田一耕助のトランクが決まる経緯や、加藤武さん演じる等々力警部の胃薬など愛すべきキャラクターたちの誕生に貢献した市丸洋さん(左)、


元々電飾という電気関係を扱う担当ながら、市丸さんが体調を崩した際に高峰三枝子さんにかかる血糊の噴出しを手がけたことで、以後2006年の『犬神家~』リメイクに至るまで血糊をはじめ様々な作業を任せられた稲垣秀男さん(真ん中)、


特殊美術の担当として、あの助清の白いゴムマスクや、湖面から突き出た足など、『犬神家~』の代名詞ともなっている伝説的なイメージを作り出した安丸信行さん、


『犬神家~』の助監督を務め、作品のこぼれ話や監督のご機嫌まで細部まで知り尽くす浅田英一さん(真ん中)、


『悪魔の手毬唄』の制作係として、ロケにまつわるエピソードや若山富三郎さんの伝説などを目の当たりにしてきた前田光治さん、


そして、東宝映像美術の小道具・装飾担当として2006年の『犬神家~』に携わり、先輩たちから受け継いできた映画作りの現場で現在も腕をふるっているうてなまさたかさんが進行を務めてくださいました。

2時間半にわたるトークでは様々な話題が飛び交い、盛り沢山で充実した内容となりました。参加してくださったお客様には、映画作りの現場の雰囲気や、映画作りがいかにクリエイティヴなお仕事か、ということを少しでも感じていただけたのではないかと思います。
皆さん裏方のお仕事を支えてきた方達ばかりなので、お客様の前で話せるかどうか心配されていましたが、客席からの熱視線に囲まれて、終始和やかなムードでトークを行なうことができました。皆さん撮影時に作ったジャンパーを着てきてくださったり、監督や出演者からいただいたものを大切に持ってくてくださるなど、お客さんへのサービス精神に溢れ、かつスタッフ間のチームワークの強さも感じることができました。

ゲストの方の中には、関東近郊とはいえかなりの遠方からわざわざ鎌倉まで足を運んでくださった方もおり、トークを少しでも良くしようと力を合わせてくださったゲストの皆さまには、本当に心から感謝申し上げます。


4日のイベントでは打って変わって、学生服姿の若者たちが壇上に並びました。昔の映画を上映する機会の多い当館では兼ねてより、若い人たちに昔の映画を見てもらいたいと考えていました。今の展示のテーマである「ミステリー映画」なら興味も持ちやすいかな?ということで、ご近所さんである鎌倉学園にお声がけしたところ、快く応じてくださり、今回のコラボレーションが実現しました。


現在の部員は中高合わせて3人と少し寂しくはありますが、この談話室のために何度も何度も映画を見直したり、本やインターネットで映画の背景を調べたりと大活躍。人前で話すことへの不安や緊張はあったと思いますが、話す順番やお客さんに聞きたいことなど事前にちゃんと相談してあったので、非常に落ち着きのある態度でとても頼もしかったです。さすが、自分たちで映画を作って大会に出品しているだけあって、市川監督の編集術に関しては、○分間で○個のアングルから○個のショットを使っていると、数字を使った分析を試みており、非常に説得力がありました。
また偶然にも、大学で映画制作を学んでいる学生さんが数人映画を見にきてくれていて、市川作品の魅力や編集の凄さについて、若者たちが熱く語るという、フレッシュな光景を目撃できたことは大きな喜びでした。
「中高生から見た日本のミステリー映画の魅力」は、12月1日にも『砂の器』上映後に開催しますので、足をお運びいただけますと幸いです。

そんな密度の濃い2つのイベントに彩られた週末は、「文化の日」の名にふさわしい2日間となりました。(胡桃)