横溝×金田一×市川崑をめぐる2つのイベント

18/11/07

現在開催中の特別展「ミステリー映画大全集~横溝正史vs.松本清張~」。
10月30日~11月4日の1週間は、展示のメインのひとつでもある、横溝正史原作の金田一シリーズの映画化作品から、映画史に残る傑作でもある『犬神家の一族』(1976年)、『悪魔の手毬唄』(1977年)を上映しました。


その関連イベントとして、3日には両作品の映画作りを支えたスタッフの方達によるトークイベント「金田一シリーズはこう作られた!~市川崑映画の舞台裏~」を、4日には『犬神家の一族』上映後に鎌倉学園の映画研究同好会の生徒さんが映画について語る映画談話室「中高生から見た日本のミステリー映画の魅力」を開催しました。

市川監督による金田一シリーズを見ると、作品としてのインパクトはもちろんですが、細部にわたり非常にこだわって作られているのがわかります。今回の展示では、映画で実際に使われた小道具やセットデザイン画などをご紹介していることもあり、美術や小道具、編集など裏方の作業を通して、これらの作品が一体どんな風に作られているのかをお客さんにも知っていただきたいと思い、トークを企画しました。当初は2,3名の方にご登壇いただければ…と考えていたのですが、この話をするなら○○さんにもいてほしい、この話は○○さんに聞かなくちゃ、とあれよあれよと人数が増えて、当館のトークイベント史上最大の7名の方にご登壇いただくという、物凄く豪華な、そして貴重なイベントとなりました。

今回ご登壇いただいたのは…
編集として市川監督から絶大な信頼を寄せられ、金田一シリーズの独特でスピーディーなカッティングを生み出した長田千鶴子さん(右、金田一の顔が入ったセーターは、石坂浩二さんが作ってくださったそうです)、


『犬神家~』の小道具を担当し、金田一耕助のトランクが決まる経緯や、加藤武さん演じる等々力警部の胃薬など愛すべきキャラクターたちの誕生に貢献した市丸洋さん(左)、


元々電飾という電気関係を扱う担当ながら、市丸さんが体調を崩した際に高峰三枝子さんにかかる血糊の噴出しを手がけたことで、以後2006年の『犬神家~』リメイクに至るまで血糊をはじめ様々な作業を任せられた稲垣秀男さん(真ん中)、


特殊美術の担当として、あの助清の白いゴムマスクや、湖面から突き出た足など、『犬神家~』の代名詞ともなっている伝説的なイメージを作り出した安丸信行さん、


『犬神家~』の助監督を務め、作品のこぼれ話や監督のご機嫌まで細部まで知り尽くす浅田英一さん(真ん中)、


『悪魔の手毬唄』の制作係として、ロケにまつわるエピソードや若山富三郎さんの伝説などを目の当たりにしてきた前田光治さん、


そして、東宝映像美術の小道具・装飾担当として2006年の『犬神家~』に携わり、先輩たちから受け継いできた映画作りの現場で現在も腕をふるっているうてなまさたかさんが進行を務めてくださいました。

2時間半にわたるトークでは様々な話題が飛び交い、盛り沢山で充実した内容となりました。参加してくださったお客様には、映画作りの現場の雰囲気や、映画作りがいかにクリエイティヴなお仕事か、ということを少しでも感じていただけたのではないかと思います。
皆さん裏方のお仕事を支えてきた方達ばかりなので、お客様の前で話せるかどうか心配されていましたが、客席からの熱視線に囲まれて、終始和やかなムードでトークを行なうことができました。皆さん撮影時に作ったジャンパーを着てきてくださったり、監督や出演者からいただいたものを大切に持ってくてくださるなど、お客さんへのサービス精神に溢れ、かつスタッフ間のチームワークの強さも感じることができました。

ゲストの方の中には、関東近郊とはいえかなりの遠方からわざわざ鎌倉まで足を運んでくださった方もおり、トークを少しでも良くしようと力を合わせてくださったゲストの皆さまには、本当に心から感謝申し上げます。


4日のイベントでは打って変わって、学生服姿の若者たちが壇上に並びました。昔の映画を上映する機会の多い当館では兼ねてより、若い人たちに昔の映画を見てもらいたいと考えていました。今の展示のテーマである「ミステリー映画」なら興味も持ちやすいかな?ということで、ご近所さんである鎌倉学園にお声がけしたところ、快く応じてくださり、今回のコラボレーションが実現しました。


現在の部員は中高合わせて3人と少し寂しくはありますが、この談話室のために何度も何度も映画を見直したり、本やインターネットで映画の背景を調べたりと大活躍。人前で話すことへの不安や緊張はあったと思いますが、話す順番やお客さんに聞きたいことなど事前にちゃんと相談してあったので、非常に落ち着きのある態度でとても頼もしかったです。さすが、自分たちで映画を作って大会に出品しているだけあって、市川監督の編集術に関しては、○分間で○個のアングルから○個のショットを使っていると、数字を使った分析を試みており、非常に説得力がありました。
また偶然にも、大学で映画制作を学んでいる学生さんが数人映画を見にきてくれていて、市川作品の魅力や編集の凄さについて、若者たちが熱く語るという、フレッシュな光景を目撃できたことは大きな喜びでした。
「中高生から見た日本のミステリー映画の魅力」は、12月1日にも『砂の器』上映後に開催しますので、足をお運びいただけますと幸いです。

そんな密度の濃い2つのイベントに彩られた週末は、「文化の日」の名にふさわしい2日間となりました。(胡桃)