真夏のトークイベントを終えて

16/09/02

台風がいくつか通り過ぎ、気温も少しずつ涼しくなり始め、鎌倉もいよいよ夏の終わりという気がいたします。

鎌倉市川喜多映画記念館では8月に2回のトークイベントを開催いたしました。

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まずは8月17日(水)、「ハリウッド・カップルズ今昔物語」と題して、映画評論家の渡辺祥子さんにご登壇いただきました。この日は『グレン・ミラー物語』の上映もあり、ジェームズ・スチュアートとジューン・アリスンの本作でのコンビネーションは本当に素敵でまさにベスト・カップルというお話から始まりました。彼らは実生活での夫婦ではないのですが、映画の中では3回夫婦役を演じています。

渡辺さんがご紹介くださったのは、パーティでジューンの夫ディック・パウエルが、ある人にジミー・スチュアートを紹介するとき「こちら、ぼくの妻の夫であるジェームズ・スチュアート」と語ったとされるエピソード。「ジュニー(ジューンの愛称)はいい女房に違いないよ。だって(映画の共演で)ジミー・スチュアートが3度も結婚しているのだからね」と。ちなみにこのエピソードは、渡辺祥子さんの夫で同じく映画評論家の筈見有弘さんの著作『ハリウッド・カップルズ』(1998年/キネマ旬報社)にも詳しく書かれています。

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ジミー&ジューンに続いて、ゲイリー・クーパーとパトリシア・ニール、エリザベス・テイラーとリチャード・バートンの当時の世を賑わせたエピソード、それからバーグマンに関する最新のドキュメンタリー映画(『イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優』)公開作のお話にと、つぎつぎ話題に花が咲き、会場の皆さんもお話に頷きながら、今日の映画/かつて観た映画のあれこれをしみじみと思い返しているようすでした。

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お題目はハリウッド映画の“今昔物語”ということで、そこから先は『タイタニック』のワールドプレミア上映(東京国際映画祭)で来日したディカプリオの1997年当時のことから最新作で念願のオスカー受賞に至るまでのこと、最新作『ブルックリン』の主演シアーシャ・ローナンの顔立ちとスタイル、50年代初期のファッションとブルックリンの雰囲気、それから『ローマの休日』の真の脚本家として有名な『トランボ』の伝記映画のことまで、作品の魅力たっぷりにお話しくださいました。トランボをしっかり支え、励まし続けた妻クレオ役をつとめたダイアン・レインは、渡辺祥子さんも仰っていましたが、とっても素晴らしい演技でした。10代の頃、青春映画で輝いていた彼女とはまた一味違った魅力を発見できましたし、そういえば今日のお話は、同じく伝記映画で良妻が夫をしっかりと支える『グレン・ミラー物語』と、『トランボ』の両作ともに本当に良い夫婦、良いカップルという点でも共通していました。『グレン・ミラー物語』を鎌倉でご覧になった方には、ぜひとも『トランボ』もご覧になっていただければと思います。

 

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こちらは8月20日(土)、『カサブランカ』上映後のアフタートーク。今回の企画展チラシ&ポスターの表紙イラストでもお馴染み、宮崎祐治さんに「私の中のハリウッド映画」というタイトルでお話しいただきました。キネマ旬報などで映画をテーマにしたイラストやエッセイをかいている宮崎祐治さん。キネ旬で連載されていた『東京映画地図』も書籍になり、出版されたばかり。当記念館でも現在、好評発売中です。

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 そんな宮崎さんに、本日の上映『カサブランカ』のイラストを特別この日のために描いていただきました。ポストカードにして、本日参加の皆様への特別プレゼントになりました!

リック(ハンフリー・ボガート)がイルザ(イングリッド・バーグマン)に名セリフ「君の瞳に乾杯」と言っているところですね。劇中、何回かこのセリフが交わされます。

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良い映画に出会うと、それを誰かに伝えたくなる。普通は言葉で口にして伝えるか、あるいは文字で書くかだと思うのですが、宮崎さんは映画を観おわってそれを人に伝えたいとなったら、まずは「描きたくなる」のだそうです。向き合うふたりの仕草や表情、視線の向き、ミュージカル映画のダンスシーンならば指先や足先の向きなど、作品の重要な雰囲気が失われないよう宮崎さんのイラストの細部には細心の注意が払われています。

十代の頃にキネマ旬報で和田誠さんの「お楽しみはこれからだ」の連載がスタートし、夢中になって連載を読み、映画を追いかけたという宮崎さんは当時、読者投稿でご自身も映画のイラストを投稿。誌面に掲載されることになります(その名も「お楽しみはこれだけだ」シリーズ)。やがて先述の筈見有弘さんが編集をつとめる雑誌で、ハリウッド通りの地図のイラストやハリウッドスターのイラストを筈見氏に依頼され描くことになります。奇しくもこの日は筈見有弘氏の誕生日(1997年に食道癌のため死去)でした。宮崎さんが筈見有弘さん、渡辺祥子さんご夫妻と出会った頃のお話をうかがっていると、(洋画・邦画の違いはあれど)その頃から現在出版された『東京映画地図』にいたるまで、宮崎さんの【映画-イラスト-地図】の3点は、息の長い活動として続けられ、連綿とつながっているのだということがよくよく伝わってきました。トークイベントの最後にはサイン会に応じていただき、本をお買い上げいただいた皆様にはひとりひとり宮崎さんがサインをしてくださいました。

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どちらのイベントにも足を運ばれたお客様もいらっしゃいましたが、今回の企画展ならびに上映作品を楽しむ上でも、たいへん充実した内容の濃いトークイベントとなったのではないでしょうか。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

本企画展は9月11日まで開催中です。まだ間に合いますので期間中、ぜひとも足をお運びください。(B.B.)